★★★★☆ 誰が本を殺すのか

佐野眞一著 プレジデント社 社発行
価格 1,800円
出版 2001年2月

ノンフィクションとしての面白さを堪能させてくれる本であると同時に、紹介されている事実と現象をよく理解すると、自分の仕事への応用も出来る可能性もあり、1粒で二度美味しいお勧め本。
面白さから、約500ページの本を、仕事をしながら1週間で読了してしまった本。

内容は、オーソドックスに展開されており、まず、現在の本というメディアが置かれている現況認識が求められ、続いて将来展望というかあるべき理想像が語られ、最後に現況を理想像へとするべきアクション例を多く提示する、という三段論法の展開。

現実に起こっている問題への答えというか、対応策は1つだけではないし、これこそ絶対正しいというものもないけれど、全国の、特に地方書店で起こっているmovementを数多く見せてくれて、この内容は色々と考えさせてくれます。
この本から仕事へヒントが出ないかなぁ、なんてね。

目に付くのがタイトルにもなった「誰が本を殺すのか?」。

本は生まれる一方で(出版)、殺されます(読者に届かぬ在庫となる、廃棄)。

殺され方は実に様々で、こういうことなのか!と思い考えてしまう。
出版はしたけれど、読者に届かなければ「死んだも同然=殺されている本」という捉え方。
述べられている通り、客注=客からの指定注文のこと、への書店の対応はのんきなもので「納期が2~3週間後」となるのは異常なことではない。その原因は書店への販売店たる「取次ぎ」、更に「出版元」となって、どんどん川上にさかのぼって原因が究明されていく。

ところが、殺している業界の人達は、自分勝手に殺している訳ではなく、実は市場である我々消費者が、そうさせている一面がある、というのがピン、とくる点。

良書が減ったとか、魅力的な著者の多くが1990年代に他界してしまったとか、色々と語られていますが、実はニーズが無い限り商品は存在しえない市場の原理原則が存在しますので、我々の購買記録から生成された出版作業であることも一面としてあるのです。

市場原理、すなわち売れ残ってばかりの商品ならば、即発刊中止となるのですが、コンスタントに売れるから発刊される。 コンスタントな類の本は、実は週刊誌などの雑誌。

スポーツ雑誌から芸能界の雑誌、パソコン雑誌であったりと、短期的には必要な情報かもしれないが、一方で1週間もするとゴミとなる「紙の塊」であることも事実。

そんな風に読むと、自身も反省しなくちゃならないような雰囲気になる ( う~ん、事実だからねぇ・・・・・ )。

そして、そんな販売方針をとる書店や、取次ぎに嫌気がさした業界人たちの中には、本をweb-siteで販売する人もいるが、彼らの動機としては、「自分の理想と思える書店を作りたいから」、というもの。 このコメントに業界の需要サイド・供給サイドともに抱える問題が凝縮されているように思います。

基本的には、なぜ?を何回か行ってゆくと到着できるようなことになるのですが、そういう基本的なことを書いている著者が少ない中で貴重な存在。