★★★★★ 日本朝鮮戦争

著者:森 詠

発行:徳間文庫

価格:550円/一部 全11部

出版:1998年11月

 単なるシミュレーションではなく、この本を読むことで現実が浮き出てくる、そんな一冊。

 日本と朝鮮半島の2国間の関係は、歴史というフィルターが不可欠な関係ですが、簡単に理解出来る代物でもないし、かといっていわゆる学識者の意見をヒアリングしたとしても、その人の世代によって微妙にニュアンスがことなるので、ボクのような第二ベビーブーマーの世代からすれば本真実が何なのか分らなくなる。その難しい分野に臨んだ一冊。

 21世紀の今だって、教科書への記載がどの言葉を使っているかで日韓有識者間で議論の的になったりする。歴史認識は各国の主観でまとめればよいものだと思っているので本来は議論の時間が無駄。誠意ある態度を示すだけなら有効な手段ではるが...。

 

 とまぁ、本来ならそういう面倒なテーマに対して、あまり肩肘はらずに臨めそうな本。というと、言い過ぎかも知れませんが、客観的に国民レベルの気持ちや、国際パワーバランスがどうなっているのかを、ポイント良く指摘してくれる本として読めば、単なるシミュレーションとして読むより興味深く読めます。瀬島龍三をモデルにしたといわれる不毛地帯が存在するように、日朝関係をモデルにした本として読むとかなりはまれます。

 登場する地名や、武器、軍隊名称などもこれでもか!というくらいに可能な範囲で実名になっているし・・・リアルさはかなりすごい。その凄さの証明なのか、最後の参考文献のページを見ると、あるわあるわ軍事関係の各種書籍、防衛庁発行の資料、ペンタゴン発行の資料などなど、とにかく普段見ることがない本という本が出ているので、その凄さを垣間見ることができましょう。

 タイトルが過激なものゆえに、書店で見つけてもなかなか手にとって見ることがないかもしれませんが、戦争ものの本としての水準は高いし、現代情勢をフィルターにした舞台設定は上述のようなものでリアルさは抜群の本ですが、ぜひ巻末のエピローグも読んでください。

 今年で60歳を迎える著者の意見が記載されている。

 

-引用開始-
 平和は戦争と戦争の間の期間をいうものであって、いつ平和が破られるかもしれないし、いつまで平和が続くとは誰も保証できないものである。平和な世の中を生きる人に対しては、平和なときを瞬間瞬間を精一杯生きてほしい、
-引用終了-

 

 そんな姿勢が必要である、というコメントが添えられています。
 非常に考えさせられる内容ですが、事実だと思いますし、8月に読む本として適切な本の一つとも言えそうです。興味をもたれた方は是非どうぞ。