アメリカも農業ではTPPを看過出来ない

こういう情報は報道されない。でもネットの時代だからこそ分かる情報を!

 

実はアメリカの畜産団体の大手たる牛乳生産者の協会だってTPPには反対している。具体的には価格競争力を持つニュージーランド産の乳製品に限定してTPPの関税撤廃対象から除外するよう求め、陳情書を昨年2010年にUSTR(米国通商代表部)へ提出している。

 

日米間の乳製品では価格競争力に自信があるようだけど、相手がニュージーランドになると自信が無いようで。理由も明確ですが...。

 

これを見た方は「そんな馬鹿な?...」と思う人もいると思いますが、これが現実。実際にTPPの交渉現場では、アメリカの関税撤廃からニュージーランド産乳製品は除外しつつ、他のアメリカ製品に対する関税は撤廃してもらうという都合の良い、良いとこ取りを突きつけているはずです。

これぞ国際協議。最初はお互いに何を大切にしているか突きつけ合うのです。

 

折角ですから意訳した日本語も付して以下にサマリーを。

◆Quote

 NMPF Insists on Total Exclusion of U.S.-New Zealand Dairy Trade in TPP: January 25, 2010

NMPF(全米牛乳生産者連合)は、TPPにおけるアメリカとニュージーランドの貿易から乳製品を除外するよう主張

 

In a letter to the Office of the United States Trade Representative (USTR), NMPF again pressed for full exclusion of New Zealand’s dairy products in the Trans-Pacific Partnership (TPP) trade agreement.

USTRに出した書簡のなかで、NMPFはニュージーランド産の乳製品はTPPの対象外とするよう再び主張した。

 

Although NMPF believed in the importance of balanced trade and in the potential for well-negotiated trade agreements to benefit the U.S. dairy industry as a whole, each agreement must be judged on its own merits.



NMPFは、アメリカ乳製品産業全体としては、調和のとれた貿易が大切なこと、また、しっかりと交渉された貿易協定によるメリットを信じているが、個々の協定はそのメリットを個別に判断されるべきと考えている。

 

A U.S.-New Zealand TPP would negatively impact the U.S. dairy industry.

アメリカとニュージーランド間のTPPは、アメリカ乳製品産業にマイナスの影響を与えるはず。

 

NMPF estimated that milk prices received by producers would drastically drop and gross revenues received by U.S. dairy farmers would plunge by a cumulative $20 billion over the first 10 years of the FTA if U.S. dairy restrictions on exports from New Zealand were fully phased out in the TPP FTA.

NMPFの予測では、もし、TPPによりアメリカとニュージーランド間で乳製品に関する関税が完全撤廃されると、アメリカの牛乳生産者が受け取る際の乳価は大きく下落、アメリカ乳製品農家の受け取り収入はFTA導入後最初の10年間で累積200億US$は減少する。

 



The letter is available here. Members of the Congressional Dairy Farmer Caucus alsosent a letter to USTR Ambassador Ron Kirk expressing their support for exclusion of U.S.-New Zealand dairy trade under the TPP.

その書簡はこのリンクで読めます。また、連邦議会乳製品幹部会のメンバーは米国通商代表部のRon Kirkにニュージーランド産乳製品の対象除外に向けた支持を表明する書簡を送った。

◆Unquote

 

こういうふうに利害が真っ正面からぶつかる時は、新たな利害関係を作ることで仲間とすると良い。そうすれば、目前の利害を相対的に小さなものとなることが多い。具体的には、両国共通の仮想敵国とか利害対象を作り、徒党を組むと良い。歴史に学べばそうなる。

 

アメリカとニュージーランドの対立は、どういう流れで消えるのだろう?まさか対日貿易で徒党を組むとか?ちなみに、ニュージーランドではTPP反対運動が起こっている。理由は単純。「アメリカは乳製品市場を開放しないだろうから、ニュージーランドの誇る世界最大の乳製品輸出企業のFonterraでさえ得るものが無い。だから加盟する理由が無い。」というもの。

 

とはいえ、アメリカが考える対日圧力はあの手この手でやってくる。

だから余計に心配になる。