キャッチコピーは突然にやってくる...

過去十年間、日本経済でどんなことが注目されたのか、或は注目されようとして時の政権が提唱してきたかをザックリとまとめてみた。

すると、こういったキャッチコピーは、アメリカからの年次改革要望書に準じた規制排除政策を推進するためのスケープゴートである可能性が極めて高いようです。

例えば...

- 1997年は「大競争時代」「メガコンペティション」。

- 2003年は「構造改革」「小さな政府」

- 2010年は「平成の開国」とか「第三の開国」。

といったコピー。

「大競争時代」の頃、国会討議では野党や反対論者が「慎重な検討が必要だ」として反論すると「今はスピードの時代だ」として詳細の検討をスキップされることもありました。

 

今に思えば、金融事業の規制緩和、持ち株会社制度の解禁等は日本の産業の歴史から見れば必然であった制度を廃止することだったけど、耳に心地よいコピーや危機感を煽られた演説を聞いてしまうと、目が霞むんでしまうもの。

 

具体的に見ましょう。

1997年は「金融ビッグバン」とか「円の国際化」といったサブコピーまで出てきて、バブル崩壊以降の景気低迷感を打破するには公共投資ではなく規制排除が必須とさえ言われたものでした。逆に規制排除さえすれば景気は良くなるし、多少の痛みはあるものの大きく飛躍するには必要だといった論調もメディアに多数露出。

また、金融産業についてはグローバル競争に遅れることのないよう、むしろ打って出るには金融ビッグバンしかない!といったギャンブルとも受け取れる発言もメディアでは多かった。肝心のメディアは規制改革されてないから対岸の火事、要は地上波の特権は今も続いている。

時は移り、2004年は「構造改革」。

小泉政権が「民に出来ることは民に」とのサブコピーを印籠のように翳しつつ、当時の不景気の要因は既存の規制にあるとして解散選挙まで実行。要は景気が悪い原因は規制にあり、規制の代表格として郵政を採り上げ、国民の是非を問うとして郵政解散まで行ったもの。

党内では法案に抵抗するグループを「抵抗勢力」として排除、旧来の自由民主党の票田であった農業票や郵政票を放棄してまで推進することで「本気の規制緩和」を演出。この「劇的」な演出が大衆には効くもので、郵政民営化を争点とした解散総選挙では自由民主党が大勝、小泉政権はこれ以上無い支持を得て政権を進めていた。

郵政改革によって景気が浮揚することはないことは分かっていたし、実際そうであったけれど、規制改革が景気を良くするのではないかと期待を持った人が多かったのでしょう。だからこそ総選挙では圧勝したのでしょう。

因に小泉以降は不発、というなかれ。後輩の首相達が小泉時代の政策のツケを払わされてきたようなものだ。

 

そして現在。2010年は「平成の開国」「第三の開国」。

日本は開かれた国ではないとして更なる関税撤廃を進めることで景気浮揚を図るとした菅政権。貿易立国である日本は自由貿易を主導する立場にあり、更なる開国を進めることが必要だというもの。開国をすることが目的に聞こえるが、アメリカにすり寄るふりした深謀遠慮にも見えず残念。

アメリカのターゲットはご存知の通りTPP。またの名を日米FTA。輸出倍増による雇用回復を狙うアメリカにとって悲願のFTAなのです。他の小国相手の貿易では雇用倍増は果たせないので対日輸出を物販、サービスの双方で展開するはず。

アメリカが得るものは想像がつく。農業、金融、物流、知的財産権、医療分野でしょう。日米経済調和対話を読めばすぐに分かるはず。アメリカ基準を日本も導入せよ!という趣旨なんだけど、本当に導入されたらアどうなることか分からん。

 

1994年以来、時の米国通商代表部(USTR)が来日しては同じ言葉をステートメントに残してきた。自由、規制緩和、市場開放ばかり。逆にアメリカは乳製品と砂糖は自由貿易を頑に拒んでいる。日米貿易では斯様な商品が無いから報道されていないのだろう。でも、アメリカだって自由貿易を否定している分野を持っていることをしっかりと日本国民に伝えないといけないと思う。

 

アメリカの要望、それをそのまま国民に伝えず、耳に心地よいキャッチコピーとともに演出してきた政府の努力は認めるが、その結果が現在。何とも頼りない。

 

次の転機でもキャッチコピーが出てくるはずですが、踊らされないよう、しっかりと本質を見るようにしましょう。

 

(参考)資料;年次改革要望書