[書評]★★★★★ 目に見えぬ侵略(中国のオーストラリア支配計画)

書評です。

目に見えぬ侵略(原題:Silent invasion)は、中国によるオーストラリア属国化計画の暴露本。

これじゃぁ、トランプ大統領が怒り心頭になるはずです。

 

2004年8月に中国共産党が北京で開いた会議で、米国の同盟国を解体する最初のターゲットとしてオーストラリアを設定。以降、同盟破壊工作が始まったと書かれ、中国がかなり根気強く継続してきたことにも驚かされます。 

現代の"侵略"は戦闘行為ではない

米国の同盟国は、民主主義、資本主義、自由主義を原則としています。

この西側の原則を、共産党が悪用して、破壊する工作の実例です。

 

実際に本で紹介されていることは、中国は膨大な資金を使って、

  1. 投資して港や送電設備を買う・使う
  2. 議会の多数派工作をする
  3. 議員や議員に近いシンクタンクに親中国或いは媚中のプロパガンダを浸透させる。
  4. 外国の大学に資金を提供して孔子学院を作り、留学生を送り込む
  5. その他使える人はバレるまで使い倒す。

大学だって、中国人留学生の派遣が約束されれば学費収入の増加を材料として、孔子学院の設立を認める。その上で、共産党によるプロパガンダを堂々と学生達に吹き込み、洗脳するか共産党の政策に同調させる。

 

21世紀の戦争は、採算の取れない戦闘行為ではないようです。

 

経済力と技術力、知的財産を使って、いかに同盟関係を相対有利に持ち込むかの競走とも記載あり、共産党は目に見えないように侵略していると警告する本です。

共産党のプロパガンダを警戒する人には差別主義!と反論

中国市場へのアクセスによる利益誘導、或いは、中国に残る親族への脅迫や迫害を材料として、オーストラリア人の経済界、或いは、華僑や中国人留学生や企業人を共産党の意のままに操るという。

 

その根拠が不完全な法治国家、中国の"国家情報法"。

"不完全な"というのは、共産党に権力が集中しているから、三権分立による牽制がないため。

 

中国系オーストラリア人の中には、北京に対する協力を拒んでも実害のない人もいるけれど、親戚が大陸にいると脅迫されるから厄介という。

 

これが真実なら、共産党はテロリストですね。

 

共産党が他国と比べて異質な点

現代の企業活動は自国だけでなく、多国籍に及ぶことが多いですよね。

 

だから、外国企業による自国政府に対するロビーイング等は普通にあります。

 

でも、北京の異質な点は、北京の戦略や意向を実現させるのように、中国企業から外国政府へロビーイングするんです。民間企業が自社に便益を要求するのではなく、母国への便益を要求する。

 

これが異質な点。

普通は、ビジネスについてのみです。

 

例えば、アメリカのコカコーラ社が日本に進出する際に、アメリカ政府の戦略を実現させるために、市場進出やロビーイングをするでしょうか?

 

Business is business.

ビジネスは政治ではないので、そんな馬鹿なことはありません。

 

日本も他の西側諸国も同じですが、北京だけは違う。

 

経済利益を材料に脅しをかけて、北京の意向を受諾させるんです。

 

これが警戒される理由です。 

 

共産党を警戒する人には差別主義と罵倒

オーストラリアの実例では、共産党の意向に沿わない人を見つけると、中国人に対する差別主義社だ!、外国人恐怖症だ!ヒステリーだ!といって責め立てるようです。

 

でも、これが効果的。

 

移民が多いオーストラリアでは、オープンでないことを嫌う人が多い。

 

だから、差別主義社と言われることは耐えられないようで、共産党の工作員になってしまった人は、工作の邪魔になる人や機関にそんな言葉を浴びせることで、口撃します。

だからトランプ大統領が中国へ吠える

アメリカは現代における超覇権国です。

 

覇権国である理由は、基軸通貨のドル、軍事力、経済力を背景とします。

 

でも、それだけではありません。

同盟国とのネットワークが大きな力となっています。

 

太平洋なら、日米同盟、米韓同盟。

運河で有名なパナマもそう。

欧州ならNATO。

その他、オーストラリアのダーウィン港にも米軍の港を設置しているんですね。

 

こうした同盟国とのネットワークを壊すことが北京の狙い。

 

到底、アメリカが看過出来ません。

 

中国の行為は、民主主義の方法で民主主義を破壊する行為です。

しかも、目標は、米国の同盟国との関係を破壊、或いは希薄化することです。

 

だから、トランプ大統領が対中発言で大変圧力的な態度で反抗の狼煙を上げているんです

 

これで米中戦争の背景が大きくわかります。

民主主義の弱点を突いた工作

この本によると、共産党の視点では、民主主義とは

  • 国民世論をコントロールし、
  • 政治家を抱き込めば、
  • 都合よく制御出来るという認識です。

民主主義の手法で、民主主義を破壊するということで、大変恐ろしい。

 

中国共産党は、共産党の運営を買収させないが、他国の運営は買収するという考え方とも理解出来ます。

 

中国では、中央や地方政府に対して賄賂や収賄を厳しく罰してきました。

特に習近平になってからは厳しさが一層増しましたが、共産党に対する買収を拒否ということなんでしょうね。

まとめ

日中友好を唱えて付き合えた時代は過去の話。

大昔なら「一緒に井戸を掘った友人は大切にする」という中国の諺が紹介されましたが、あれは嘘ですね。

 

「共産党は、水が出るまでは友人と呼び、水が出たら恩を忘れる組織」

 

改革開放以降の日本の支援実績を考えると、この位に思って間違いはない。

改革開放の際、最初に中国進出を進めたのは松下電器産業です。

もし、松下幸之助が生きていたら、共産党幹部に怒鳴り込んでいてもおかしくないのが現状です。

 

中国人全員がおかしな人とは思わない。

原因は共産党。

 

その共産党は、戦狼外交で暴走中です。

 

でも、他国への侵略方法は注意深く見ていないと理解出来ません。

幸いなことに、オーストラリアは途中で気づいて舵を切った。

 

中国による"中国の夢"に向かって突進中の工作が分かる本です。

日本人も注意しましょう!

文中参考にされた記事をいくつか紹介

以下は、目に見えぬ侵略の中で取り上げられた記事を紹介します。

 

他国でのことですが、日本でも既に始まっているかもしれません。

○○新聞は媚中記事が多すぎとか、〇〇テレビは絶対に共産党批判の論調で報道しない、とか色々感じることもありますが、憶測にすぎないので書きません(笑。

 

CHINA RADIO INTERNATIONALの不気味さ

普通ならドン引きするロイター通信の英文記事を引用します(Beijing’s covert radio network airs China-friendly news across Washington, and the world)。

 

趣旨の和訳は以下二点です。

ラジオ局が外国である中国共産党のプロパガンダ機関のように使われているという英文記事です。

日本のメディアは、北京に記者用ビザを取り消されるから書けないのかも知れません。

  • 北京(共産党)の隠れたラジオネットワークは親中国(China-friendly)のニュースを米国ワシントン、そして世界中に配信している。
  • 中国政府がコンテンツを統制するラジオ局は米国首都に親共産党の番組を放送している。WCRW社(ラジオ曲)は、中国共産党の統制が隠れている、世界33のラジオ局の一つ。

Beijing’s covert radio network airs China-friendly news across Washington, and the world

 

REUTERS(ロイター通信)Nov.2.2015

 

Summary

The Chinese government controls much of the content broadcast on a station that is blanketing the U.S. capital with pro-Beijing programming. WCRW is part of an expanding global web of 33 stations in which China’s involvement is obscured.

オーストラリア国会議員にしっかり指摘する人もいた

オーストラリア国会議員のGeoff Wade 氏が指摘した内容を引用します(China’s ‘One Belt, One Road’ initiative、PARLIAMENT of AUSTRALIA)。

 

趣旨の和訳は以下三点です。

  • 「中国の一帯一路構想は、中国の経済的・戦略的なもので、ユーラシア大陸からオセアニアに至る一帯一路のルートにある国々に、インフラや資本を必要とする国に提供するもの。
  • 批判家は、中国によるルート上の国に対する経済的・戦略的な師範を作ると主張する。
  • OBORは中国の成長する経済とオーストラリアの繋がりを提供する。

China’s ‘One Belt, One Road’ initiative 

Geoff Wade, Foreign Affairs, Defence and Security

 

Key Issue

The ‘One Belt, One Road’ (OBOR) initiative is a Chinese economic and strategic agenda by which the two ends of Eurasia, as well as Africa and Oceania, are being more closely tied along two routes–one overland and one maritime. Supporters suggest that the initiative permits new infrastructure and economic aid to be provided to needy economies.  Critics claim that it facilitates Chinese economic and strategic domination of the countries along these routes. OBOR provides a global context for China’s growing economic links with Australia.

豪州ダーウィン、米海兵隊拠点を中国に99年貸与 現地と中央に温度差

駐豪米軍の基地にほど近いダーウィンの港湾管理権が、こともあろうか中国企業の「嵐橋集団(Land Bridge)」に99年間の貸与契約を付与。オバマ大統領が不快感を表明してから、豪州政府の対中姿勢が変わったけれど、ちょっと驚く事件が起きていました。(産経新聞:豪州ダーウィン、米海兵隊拠点を中国に99年貸与 現地と中央に温度差)。

 

趣旨の和訳は以下三点です。

  • 2015年、豪州政府は、99年の間、中国企業に港湾を貸与する契約を506百万豪ドルで契約。この金額は港湾による年間利益の50倍超。
  • 嵐橋集団の顧問に、豪州の前貿易・投資大臣を就任させ、退任直後から年間88万豪ドルで雇っていた。同氏は、中国の海上「一帯一路」への参加を促す団体の幹部も務めていた。
  • 経済発展が停滞するダーウィンと首都との間には財政赤字解消のためと説明している。