コロナ禍が世界中に拡がり、収束する様子が見えません。
特に米国やブラジルでは歯止めが掛からず、最近は米ドル安の局面もあります。
日本円の強さはどうなるのでしょう。
気になったので、日本円がどの程度世界で使われているか、その様子をBISのWebから調べてみました。
世界の通貨取引の実績推移
下表はBIS(国際決済銀行)のWebからの引用です。
金融取引は、各国の当局や中央銀行が取引内容を把握しているので、各国の中央銀行が集まるBISは、全世界の取引情報が統計情報として公表しています。
世界主要通貨の取引実績
金融取引は、各国の当局や中央銀行が取引内容を把握しているので、各国の中央銀行が集まるBISは、全世界の取引情報が集まってくるということです。
この資料の見方は、米ドルを例にすると、88%と表示がありますが、その2分の1が実際のシェア。つまり、44%です。
というのも通貨取引の場合、米ドルを売る国、買う国のそれぞれから統計情報として集まるので、売買両方入れて取引高を把握しています。
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主要通貨のシェア
国際決済通貨と呼ぶ基準は明確にはありません。
基準は無いのに、経済ニュースで頻繁に報道されるのは、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、スイスフランの5通貨です。
その通貨の世界における取引シェアをみると、やっぱり主要プレーヤーの一角を占めるんですね。
順位とシェアをみると、
1位:米ドル 44%、
2位:ユーロ 16%、(米ドル+ユーロで60%)
3位:日本円 8.5%、(米ドル+ユーロ+日本円で68.5%)
4位が英ポンド6.5%、
5位は豪ドル3.5%、
6位にスイスフラン2.5%。
1〜3位までで68.5%。1〜6位では81%を構成しています。
取引される通貨は集中しているんですね。
通貨取引は、経済活動に比例し、とりわけ国際貿易高に比例するものですが、この実需があることを理由に、現代では金融取引でも使います。
人民元のシェア
極端な事例で言えば中国でしょう。
中国人民元は、世界第二位の経済規模に対して、人民元の取引シェアは2%に過ぎません。
それはなぜか?
国際取引で受け取り通貨を何にするかは大変重要です。
取引合意から実際に通貨を受け取るまでに、通常は時間差が生じます。
だから、価値が安定している通貨(為替レート)が起用されるわけです。
国際通貨として採用されるには、その通貨の調達が容易なこと、価値が安定していること、自由に他通貨と交換できること、その国の金融市場が国際金融市場と繋がっていること等が必要になると言われていますが、中国の場合は「共産党」が制御しているので、不安と不信感が高い。
価値の安定、そして売買時の流動性ともに信用できない。
中国人民銀行だって、共産党の下部組織ですしね。
だから、国際取引で採用する場面が少ないんです。
人民元は信用されないし、各国は共産党を信用しない
信用されない行動実績を挙げると、過去にこんなことがありました。
例:人民元を信用しない理由を分かりやすく言うと
中国が輸入する時だけ、人民元を高く市場を誘導する
中国が輸出する時だけ、人民元を安く市場を誘導する
為替市場への介入は、世界中どの国もやります。
介入ニーズと財力があれば実行される、自然なことです。
よくあるのは「行きすぎた市場の反応」を制御するための介入。
自国通貨売り或いは買いの介入です。
ところが、中国の場合は、他国との事前協調や調整、連携をしません。
勝手に実施するので、他国から嫌がられます。
当然、サプライズな市場介入になるので、当局も金融機関も予測不能な状態になる。
そういった市場原理とは言えない、創られた市場での取引を望みますか?
全員NOでしょう。
だから人民元は敬遠されます。
香港ドルのシェア
こうしてみると、経済規模に対して、取引高が多いのが香港ドル。
中国と世界との取引におけるゲートウェイトも言われ、これまで香港を通じて取引をすることで、各種経済優遇策のあったのが香港を使った対中貿易です。
代表例はCEPAです。
中国経済を牽引した政策の一つとも言われます。
こうした仕組みはあるのですが、米中貿易戦争、中国の諜報活動と国家情報法による国民総スパイ化法律の存在など、気味が悪いことばかりです。
更に、香港国家安全法によって、共産党にとって何でもありの法律が出来ました。
これでは、基軸通貨はおろか、国際通貨にも採用しようという人はいません。
不条理なことがあっても、意思表示もデモ活動さえも出来なくなる。
アジアにおける憧れの対象と言われてきた香港はどうなってしまうのでしょう。
香港で頑張ってきた人が気の毒でなりません。
シンガポールドルのシェア
その香港情勢を不安視した香港人、そして、共産党の振る舞いに不安を感じた中国人が資産の避難先としていると言われるのがシンガポール。
その根拠が統計資料です。
2019年以前は1%でしたが、2019年の統計では2%へ倍増しています。
経済規模が倍増したわけではないのに、通貨決済が倍増するということは、通常では考えにくいので、真偽は不明ですが、資本の避難先になっていると推測されているんですね。
シンガポールはマナーを法律で定めているので、日本人も過ごしやすいし、楽しみやすい観光地でもあるのですが、中国人も増えるのか?
穏やかに生活できたり、観光を楽しめそうな国の雰囲気が変わらなければいいなぁ。
他通貨は増えるが、日本円はドル建てでは微減
アベノミクスはインフレ志向、円安志向の政権なので当然の結果でした。
2013年87円、2016年120円、2019:107円というドル円の為替レートを考えると、一定の存在感を維持していることがわかります。
2012年12月に自民党が与党に回帰、安倍政権が始まり、為替レートが変わりだしました。2013年1月の為替は87円ですが、国内産業を破壊するような為替が変わったのはアベノミクス以降のことなんです。
BISの統計は、あくまで米ドル換算なので為替レート次第で上下します。
一年ごとの変化に一喜一憂するのではなく中期的なトレンドを読むと、一定範囲を維持していることは明らかと思います。
民主党政権時代の86円台の為替という悪夢も異常値なので例外。
日本が海外資産を売却するという噂が広まって、日本円が高くなるという投機筋の読みから始まった円高、しかも超円高でしたから。
まとめ
やっぱり、米ドルは強い。
市場原理で為替レートが動き、価値の安定性も備え、他国通貨への交換も容易。
第二次世界大戦後のIMFブレトンウッズ体制以降、米ドルが基軸通貨になり、その便利さと安心感は世界各国に支持されているということです。
一方の日本円。
一定の存在感を示しているという書き方になるものの、全世界の8.5%を占めるということだけでも、十分大きな存在感です。
資源も何もない、あるのは狭い平地。
今は、国内産業による貿易だけでなく、海外投資による配当収益もあって国家の経常収支は黒字なので、上手な商売人、という印象です。
そうまとめると実はシンガポールと同じです。
以前より、シンガポールに興味が強くなってきました。
今はコロナ禍なので、旅行や出張に行ける状況ではないものの、事態が収束すれば、もう一度行きたい。