[書評]安いニッポン「価格」が示す停滞

2021年のゴールデンウィーク、如何ですか?

家にじっと篭ってもっぱら読書なので、今回は書評です。

 

日本経済新聞の朝刊でシリーズ記事を新書化したもので、以下三点を纏めた新書です。

  1. 日本の物価が安いことは国民生活にとって良くない
  2. 物価が下がると、給与所得に下げ圧力がかかる
  3. 日本は生産性をあげねばならない

「1,400万円は低所得」は日米で前提違うのでご注意

 

本の表表紙に「年収1,400万円は低所得の真実」とありますが、各種保険料は老師折半であるか否かとか、日本とは制度が違う米国なので1400万円でも低所得。ということで、この帯の謳い文句は鵜呑みにするのは間違いです。

 

でも、その制度差異を考慮しても、物価や給与所得の傾向を見ると、日本は下落、米国は上昇、他のアジア諸国は上昇中ということを考えると危機意識を持たねばいけません。

 

日本人や日本の不動産が安くなったことで、海外投資家が購入を開始。

その結果、日本の不動産価格が上昇、店舗は観光客向けの価格で投資回収する様子ですが、不動産のオーナーは海外投資家。国内需要への循環投資や消費がないので地元住民は嘆くという趣旨も併記されています。

 

内外価格差の大きかったバブル期とは逆転、日本国内価格が主要国で相対的に安くなり続けていいることへ問い掛ける一冊です。

訪日インバウンド需要激増の最大の理由は

 

訪日観光客によるインバウンド需要が爆発した2010年代。

この理由は、日本の観光資産の魅力も理由と思うけど「日本が安い」から。

結論から言うと以下三点。

  • 日本を除くASEAN、欧米主要国は賃金所得と物価は上昇を続けていた。
  • 良質なサービスを激安で販売する日本、激安を支える労働者、激安を教授する海外投資家と海外観光客、という構図で良いのか?
  • 日本の物価がデフレ傾向から抜けないのは賃金所得が減少するから。

日本国内の価格が安いことは良いことなのか?

はっきり言えば悪い。良いことが無い。

 

所得が安くとも物価が安ければ良いと言う人もいますが、成立している理由は低賃金を受け入れている人がいるから成立するだけです。

 

自分の生きている期間に限定せず、30年後まで考えると如何でしょう?

例を挙げたら中国に狙われているアニメ業界。

その他、外食業界、先端IT業界などが典型例です。

 

ロボットなどで生産性を高めてゆけば、別のストーリーが生まれますが「生産性」が上がらないと、企業利益が増えず、給与所得も増えません。

 

給与所得の安い国に対して、海外からキレッキレの優秀な人材が来るわけがないので、将来の技術革新力や経済成長力にも影響を及ぼすはずです。

 

企業収支

売上高  +1,000

費用(*)  -   400

--------------------------

限界利益 +  600 ( 60% )

--------------------------

労働所得 -   400

資本所得 +  200

 

(*)原材料・修繕費・設備費など外部調達費用

 

日本円の為替が安すぎる?

この本の検証不足の点は、ディズニーリゾートの1日入場券の価格を基準にして日米物価を比較している章。

  • ディズニーリゾートのコンテンツの規模が違うと思うのでチケット価格だけを比較するのでは説得力不足。
  • こうしたコンテンツや特典など支払う対価に対する詳しい分析が伴っていないのはミスリード。だって、2倍も違う(笑。

次に、2倍も違うチケット価格の謎を解くために、為替水準が円安ではないかという視点でも計算されていましたが、現在110円の為替を80円まで円高にするには、金融引き締め、金利上昇が必要になる。つまり、為替レートで説明がつく範囲を超えてしまっているということでした。

 

自然体にゆっくりと円高になるなら良いけれど、積極的に短期的に円高誘導を図るのは、自殺行為に等しいので現実的ではない。 

 

OECD加盟主要国の賃金水準

OECD公式サイトのグラフによると日本は賃金所得が安い。

しかも平均値より下位。

 

日本円を米ドルへ変える際は、購買力平価に基づいたもので、現実の為替レートよりも円高で評価しているのに安いということ。働くなら日本ではなく、米国、イスラエル、ポーランドの方が高い処遇を得られるということです。

日本で頑張っても平均値以下。これでいいのか??

 

日本の物価は今も下落するが他国は上昇中

 

2010年以降、他国の物価水準を高く感じることが顕著になったと思っていたところへ、この記事が出たことで「やっぱりそうか…」と思い購入した次第です。

 

旅行先で気になった価格差は以下2点くらいですが、ASEAN域内でもお店を選べば、大衆価格もゴージャス価格も選べます。

 

あまり気にしていませんが、年を追うごとに海外現地価格が上昇していることは感じています。

 

シドニー

観光地とはいえ、ハンバーガーが25豪ドル。日本円で2,000円強。

日本マクドナルド(バリューランチ600円)と比べてはいけないので、佐世保バーガーと比べても1,000円とか1,500円。日本の外食は安い、利益率が低い、労働分配率が低いと思った。

シドニー食べ歩き記事

201808(3) シドニーへ(オペラハウス観光)

ハンバーガー25豪ドル、シドニーの物価の高さに驚いた!

シンガポール

ユニバーサルスタジオシンガポールの一日入場券は90シンガポールドル程度。

東京ディズニーランドとほぼ同じ価格帯ですが、スペースが違うんですよ。

 

東京の方が広いのに価格は同じレベルなので東京の安さを感じます。

シンガポールの土地代が異常に高いとも言えますが、日本の土地が安い?

"安いニッポン"は外食に限らない

 

北海道のニセコでは不動産を海外、特に不動産バブルですでに加熱している中国や韓国の富裕層が買い漁る場面が多いとのこと。実際にそんな記事や報道を目にしたことはありますが、ニセコの他にも京都市も問題に直面しています。

2021年4月19日付け京都新聞記事)

国内外富裕層、京都の不動産に熱視線 「割安」、コロナでも投資マネー流入

別荘目当てで京都市内の不動産が買われることで、住民税を払わない人が不動産のオーナーになることが大問題になりつつあります。

別荘なので年間に一時期しか居住しないわけです。

 

当然、住民票の移転もせず、海外投資家なら訪日時に利用する或いは転売利益を得るといった次第で、住民税を払わないけど、自治体が用意するインフラを使用するということが問題になりつつあります。

総括:課題は生産性向上

 

by カエレバ

この本で、一番大切なことは、本の最終章に専門家の意見としてある通り、労働生産性の向上が課題です。

 

日本人の給与所得を上げなければいけない。

また、そのためには労働生産性を上げなければいけない。

 

大失敗の事例は韓国で起こっていますからね。

 

労働生産性を上げずに、最低賃金の引き上げた結果、事業者による雇用が減少。

その結果、個人事業主が増えて、フライドチキン屋が増えた、屋台が増えた、となっています。

 

自分自身が生き残ることをした上で、幸せを感じる日本国民が増えるように仕事の仕方や事業を起こすなど、色々考えなければいけないと感じさせる一冊でした。

 

[書評]★★★★★ 目に見えぬ侵略(中国のオーストラリア支配計画)

書評です。

目に見えぬ侵略(原題:Silent invasion)は、中国によるオーストラリア属国化計画の暴露本。

これじゃぁ、トランプ大統領が怒り心頭になるはずです。

 

2004年8月に中国共産党が北京で開いた会議で、米国の同盟国を解体する最初のターゲットとしてオーストラリアを設定。以降、同盟破壊工作が始まったと書かれ、中国がかなり根気強く継続してきたことにも驚かされます。 

現代の"侵略"は戦闘行為ではない

米国の同盟国は、民主主義、資本主義、自由主義を原則としています。

この西側の原則を、共産党が悪用して、破壊する工作の実例です。

 

実際に本で紹介されていることは、中国は膨大な資金を使って、

  1. 投資して港や送電設備を買う・使う
  2. 議会の多数派工作をする
  3. 議員や議員に近いシンクタンクに親中国或いは媚中のプロパガンダを浸透させる。
  4. 外国の大学に資金を提供して孔子学院を作り、留学生を送り込む
  5. その他使える人はバレるまで使い倒す。

大学だって、中国人留学生の派遣が約束されれば学費収入の増加を材料として、孔子学院の設立を認める。その上で、共産党によるプロパガンダを堂々と学生達に吹き込み、洗脳するか共産党の政策に同調させる。

 

21世紀の戦争は、採算の取れない戦闘行為ではないようです。

 

経済力と技術力、知的財産を使って、いかに同盟関係を相対有利に持ち込むかの競走とも記載あり、共産党は目に見えないように侵略していると警告する本です。

共産党のプロパガンダを警戒する人には差別主義!と反論

中国市場へのアクセスによる利益誘導、或いは、中国に残る親族への脅迫や迫害を材料として、オーストラリア人の経済界、或いは、華僑や中国人留学生や企業人を共産党の意のままに操るという。

 

その根拠が不完全な法治国家、中国の"国家情報法"。

"不完全な"というのは、共産党に権力が集中しているから、三権分立による牽制がないため。

 

中国系オーストラリア人の中には、北京に対する協力を拒んでも実害のない人もいるけれど、親戚が大陸にいると脅迫されるから厄介という。

 

これが真実なら、共産党はテロリストですね。

 

共産党が他国と比べて異質な点

現代の企業活動は自国だけでなく、多国籍に及ぶことが多いですよね。

 

だから、外国企業による自国政府に対するロビーイング等は普通にあります。

 

でも、北京の異質な点は、北京の戦略や意向を実現させるのように、中国企業から外国政府へロビーイングするんです。民間企業が自社に便益を要求するのではなく、母国への便益を要求する。

 

これが異質な点。

普通は、ビジネスについてのみです。

 

例えば、アメリカのコカコーラ社が日本に進出する際に、アメリカ政府の戦略を実現させるために、市場進出やロビーイングをするでしょうか?

 

Business is business.

ビジネスは政治ではないので、そんな馬鹿なことはありません。

 

日本も他の西側諸国も同じですが、北京だけは違う。

 

経済利益を材料に脅しをかけて、北京の意向を受諾させるんです。

 

これが警戒される理由です。 

 

共産党を警戒する人には差別主義と罵倒

オーストラリアの実例では、共産党の意向に沿わない人を見つけると、中国人に対する差別主義社だ!、外国人恐怖症だ!ヒステリーだ!といって責め立てるようです。

 

でも、これが効果的。

 

移民が多いオーストラリアでは、オープンでないことを嫌う人が多い。

 

だから、差別主義社と言われることは耐えられないようで、共産党の工作員になってしまった人は、工作の邪魔になる人や機関にそんな言葉を浴びせることで、口撃します。

だからトランプ大統領が中国へ吠える

アメリカは現代における超覇権国です。

 

覇権国である理由は、基軸通貨のドル、軍事力、経済力を背景とします。

 

でも、それだけではありません。

同盟国とのネットワークが大きな力となっています。

 

太平洋なら、日米同盟、米韓同盟。

運河で有名なパナマもそう。

欧州ならNATO。

その他、オーストラリアのダーウィン港にも米軍の港を設置しているんですね。

 

こうした同盟国とのネットワークを壊すことが北京の狙い。

 

到底、アメリカが看過出来ません。

 

中国の行為は、民主主義の方法で民主主義を破壊する行為です。

しかも、目標は、米国の同盟国との関係を破壊、或いは希薄化することです。

 

だから、トランプ大統領が対中発言で大変圧力的な態度で反抗の狼煙を上げているんです

 

これで米中戦争の背景が大きくわかります。

民主主義の弱点を突いた工作

この本によると、共産党の視点では、民主主義とは

  • 国民世論をコントロールし、
  • 政治家を抱き込めば、
  • 都合よく制御出来るという認識です。

民主主義の手法で、民主主義を破壊するということで、大変恐ろしい。

 

中国共産党は、共産党の運営を買収させないが、他国の運営は買収するという考え方とも理解出来ます。

 

中国では、中央や地方政府に対して賄賂や収賄を厳しく罰してきました。

特に習近平になってからは厳しさが一層増しましたが、共産党に対する買収を拒否ということなんでしょうね。

まとめ

日中友好を唱えて付き合えた時代は過去の話。

大昔なら「一緒に井戸を掘った友人は大切にする」という中国の諺が紹介されましたが、あれは嘘ですね。

 

「共産党は、水が出るまでは友人と呼び、水が出たら恩を忘れる組織」

 

改革開放以降の日本の支援実績を考えると、この位に思って間違いはない。

改革開放の際、最初に中国進出を進めたのは松下電器産業です。

もし、松下幸之助が生きていたら、共産党幹部に怒鳴り込んでいてもおかしくないのが現状です。

 

中国人全員がおかしな人とは思わない。

原因は共産党。

 

その共産党は、戦狼外交で暴走中です。

 

でも、他国への侵略方法は注意深く見ていないと理解出来ません。

幸いなことに、オーストラリアは途中で気づいて舵を切った。

 

中国による"中国の夢"に向かって突進中の工作が分かる本です。

日本人も注意しましょう!

文中参考にされた記事をいくつか紹介

以下は、目に見えぬ侵略の中で取り上げられた記事を紹介します。

 

他国でのことですが、日本でも既に始まっているかもしれません。

○○新聞は媚中記事が多すぎとか、〇〇テレビは絶対に共産党批判の論調で報道しない、とか色々感じることもありますが、憶測にすぎないので書きません(笑。

 

CHINA RADIO INTERNATIONALの不気味さ

普通ならドン引きするロイター通信の英文記事を引用します(Beijing’s covert radio network airs China-friendly news across Washington, and the world)。

 

趣旨の和訳は以下二点です。

ラジオ局が外国である中国共産党のプロパガンダ機関のように使われているという英文記事です。

日本のメディアは、北京に記者用ビザを取り消されるから書けないのかも知れません。

  • 北京(共産党)の隠れたラジオネットワークは親中国(China-friendly)のニュースを米国ワシントン、そして世界中に配信している。
  • 中国政府がコンテンツを統制するラジオ局は米国首都に親共産党の番組を放送している。WCRW社(ラジオ曲)は、中国共産党の統制が隠れている、世界33のラジオ局の一つ。

Beijing’s covert radio network airs China-friendly news across Washington, and the world

 

REUTERS(ロイター通信)Nov.2.2015

 

Summary

The Chinese government controls much of the content broadcast on a station that is blanketing the U.S. capital with pro-Beijing programming. WCRW is part of an expanding global web of 33 stations in which China’s involvement is obscured.

オーストラリア国会議員にしっかり指摘する人もいた

オーストラリア国会議員のGeoff Wade 氏が指摘した内容を引用します(China’s ‘One Belt, One Road’ initiative、PARLIAMENT of AUSTRALIA)。

 

趣旨の和訳は以下三点です。

  • 「中国の一帯一路構想は、中国の経済的・戦略的なもので、ユーラシア大陸からオセアニアに至る一帯一路のルートにある国々に、インフラや資本を必要とする国に提供するもの。
  • 批判家は、中国によるルート上の国に対する経済的・戦略的な師範を作ると主張する。
  • OBORは中国の成長する経済とオーストラリアの繋がりを提供する。

China’s ‘One Belt, One Road’ initiative 

Geoff Wade, Foreign Affairs, Defence and Security

 

Key Issue

The ‘One Belt, One Road’ (OBOR) initiative is a Chinese economic and strategic agenda by which the two ends of Eurasia, as well as Africa and Oceania, are being more closely tied along two routes–one overland and one maritime. Supporters suggest that the initiative permits new infrastructure and economic aid to be provided to needy economies.  Critics claim that it facilitates Chinese economic and strategic domination of the countries along these routes. OBOR provides a global context for China’s growing economic links with Australia.

豪州ダーウィン、米海兵隊拠点を中国に99年貸与 現地と中央に温度差

駐豪米軍の基地にほど近いダーウィンの港湾管理権が、こともあろうか中国企業の「嵐橋集団(Land Bridge)」に99年間の貸与契約を付与。オバマ大統領が不快感を表明してから、豪州政府の対中姿勢が変わったけれど、ちょっと驚く事件が起きていました。(産経新聞:豪州ダーウィン、米海兵隊拠点を中国に99年貸与 現地と中央に温度差)。

 

趣旨の和訳は以下三点です。

  • 2015年、豪州政府は、99年の間、中国企業に港湾を貸与する契約を506百万豪ドルで契約。この金額は港湾による年間利益の50倍超。
  • 嵐橋集団の顧問に、豪州の前貿易・投資大臣を就任させ、退任直後から年間88万豪ドルで雇っていた。同氏は、中国の海上「一帯一路」への参加を促す団体の幹部も務めていた。
  • 経済発展が停滞するダーウィンと首都との間には財政赤字解消のためと説明している。

シンガポールのタクシー乗り場

目立つロゴが目印

この写真はシンガポールのタクシー乗り場の様子。

左上にある、橙色と緑色のタクシーのイラストが目印です。

標識の通り、タクシーに乗車する場所が決まっていて、ここでしか乗れない仕組み。

 

日本では深夜の乗車場所は規制があるけれど、日中は全くない地域がほとんどのはず。

でもシンガポールは違うのです。

勝手におまかせではなく、当局がなんでも決めているんですね。

客待ちの車の台数も、黄色で書かれたエリアに限定され、上の写真では最大5台しか待てない仕組み。

 

この写真では、タクシー待ちの人が2人しかいないように見えるけど、実際には左側の死角にズラリ並んだ合計7人の人がいた。それだけタクシーが足りない時間帯だったのかもしれないけど、想像を超える程にタクシーが掴まらない印象だった。

 

シンガポールにもう一度行きたいなぁ。

暑いし、物価は高いので生計費が嵩張るとはいえ、ルールが分かりやすく表示されているので何かと便利。

遊ぶには丁度良い街です。

 

 


同情はしない、けれど反日デモは悲鳴にも見える

昨日の午後四時半、2ちゃんねるのトピックで、東京工業大学世界文明センターのウェブサーバがハッキングされて、写真のようなことになっているとの情報が。

 

さすがにハッキングされているウェブサーバーにパソコンでアクセスするのは気が引けるので、携帯からアクセスしてパシャリ。ウィルスが仕込まれている可能性もあるので、パソコンでは避けた次第。

 

その前には最高裁のウェブサーバーが同様にハッキングされたり。民間企業のほうがセキュリティが堅牢なのか、企業ではない機関へのハッキングが続いている。

 

こういった仕打ちに対して、どう思うであろうか?

呆れ返るよりないけれど、こんなことでもしない限り、鬱憤が晴れない環境に追い込まれている中国人を気の毒に思うよりない。中国人といっても、共産党員ではない人のこと。党員に統治されている人民のことである。

 

国民人口は14億人ほどいるけど、そのうち、共産党員は僅か7%弱。その僅かな層が、社会の頂点に君臨し、国や人民を統治するのが中国。93%は共産党の作った枠内で働くよりないけれど、改革開放以降拡大した貧富の格差に対する不満が、いま一番の課題。人民にとっても、共産党にとっても問題はそこに焦点を得る。

毛沢東の肖像画をデモ隊が掲げているのは、昔に対する郷愁を表すシンボルなんだと思う。

以前なら、例え貧しくとも皆等しく貧しいので、問題とならなかった。

 

でも今は違う。

特権階級は米国GMのキャディラック、或いはベンツを運転手付きで乗り込み、スーツも一流海外ブランドを身につけ、レストランだって大衆層とは異なる。

一方の大衆は各省で定められた最低賃金を僅かに上回る賃金をもとに生活する。

 

かたや資産10億円、かたや年収30万円程度。この格差が縮まる様子が無いばかりか、物価上昇もあいまって生活向上の実感さえない。会社の中では昇進する機会も少ない。要は、改革開放以降の富の再分配システムが機能していないこと、人民にも相応のメリットが分配されていないことが最大の問題点なのだ。

 

日本では以前、一億総中流意識、という言葉があったけれど、中国だとどうなるのだろう。

適当な言葉が思いつかない。

 

そういった不満をぶつける先として、反日デモがある。

共産党当局の取り締まりを免れる唯一の集会やデモが反日。

 

実際にデモ隊、或いは暴徒化した集団によって破壊、略奪されたのは日本企業製品だけでなく、RolexやDior等高級ブランド品もある。富の不平等に対する表現方法とは思うけれど、表現の自由の歴史が乏しい中国の人には、別の方法が思い浮かばないのだと思う。

 

今回の反日デモは、統治される中国人民の悲鳴だ。

卑劣な方法を採った奴らに同情はしない。けれど、これは悲鳴を表現したものだ。

 

中国に駐在する知人もいる。

極度の緊張のなかで生活する日本人に被害者が出ないよう祈るばかり。

日本の新幹線ってすごいんだぞ

日本の新幹線のは、それほど語られないけれど実にすごいのだ。

 

スピードが出る車輛を運行するには、ハイスピードで移動する車輛が必ず安全に止まること。これを徹底出来ないとスピードを出せないのは当たり前のこと。

 

だからこそ、列車が停止するのに十分な距離を確保しておく必要がある。つまり、先行車輛との接触や追突がないようにする必要があって、鉄道システム全体に安全装置を配置している。

 

具体的には、新幹線を利用する乗客には気づかないけれど距離にして1km毎にセンサーがあって、先行列車との距離が3kmになると時速160kmに減速、更にその距離が2kmになると時速30kmへ減速。

それでも距離が詰まり1km以内になると停止する、という徹底振りなのだ。

 

まずは、これだけの安全装置が全て不具合を起こさないと事故は起こらない。

逆に言えば、これだけの装置があって、しかも運用を徹底して初めて安全運行が実現される。

もっと言えば、運転手が異常を視認すればブレーキをかけるはずで、何重にも安全装置がある。

 

こういうことが日本の新幹線の安全神話の裏にある。

だからこそ、なにがしかの事故が起これば、その原因を究明して、今後の事故防止策として改善策を施す。こういった一連のサイクルを、軽微な不具合が対象であっても、しっかり分析し、対策を施すことで安全が成り立つ。

それだけ凄い事なのだけど、中国では原因の究明よりも鉄道省の面子や責任逃避が優先された。

想像ですが、共産党内の手柄の取り合いや、失敗事案の責任押し付け合いがあるからと思う。

 

世界のメディアが注目するなかで、事故車輛は解体され、土中に埋められたことは記憶の通り。

この行為に対する国内はもちろん、海外からのバッシングの大きさに温家宝首相が現地を訪問したり、埋めたはずの車輛を再度掘り起こすに至った。

視察といっても事故から6日目となる7月28日のこと。

しかも、医者の許可が出たとの言い訳つきで、首相の面子を守る対策は充分になされたようだ。

 

経済発展著しい国における、共産党周辺の特権階級と、そうではない一般大衆の間の大きな溝が浮き彫りになっている。

発展しても一党独裁。この体制が優先された。

 

こうした行為はいつになれば止まるのだろう。

亡くなった方には、ただただ、ご冥福を祈るより無い。

ありがとう、台湾!

表紙タイトルは "ありがとう、台湾"、"感謝、台湾"。

 

日本人も台湾人も、文字通りに読める表紙の出来上がり。

素晴らしい!

今月のFrauが秀逸

しかもキーカラーは赤。

日本人にとって赤は特別な色ではないけど、中華系の国では赤は目出たい福の色なので、更に良い。

 

今回の震災で世界最大の180億円相当の義援金を送ってくれた隣国、それが台湾。

 

 

アメリカでもなく、中国でもなく、そして韓国でもない。

やっぱり、台湾。

 

台湾を経済規模で比べると、日本は米ドル換算で5.8兆ドルなのに対し、台湾は0.5兆ドルと日本の十分の一以下。なのに、世界で一番義援金を送ってくれた国なのだ。

 

この背景には、以前の台湾地震の際の、日本の支援振りが多分にあったはずだけど、それでも、こういう気持ちの表現は嬉しい。

 

東アジアにおいて反日を唱える国は多いけど、こういう国もあることを覚えておきたい。

会って話をすると判ることだけど、歴史的な視点においても親日の人や企業は多い。

みなさんも是非台湾へ行こう!

感謝の気持ちを表わすには表紙にある通り、訪れて楽しむのが一番の恩返し。

 

元々精神的にも歴史的にも近しい国であった台湾を、これまで以上に近い国として意識したのは、今回の震災をきっかけにした接し方かも知れない。

 

外交努力だけでもなく、かといって経済関係だけでもなく、民間人の触れ合いだけでもない、そんな総合的な関わり方を持つ珍しい国、それが台湾。

 

競争相手として見れば手強いけど、仲間として接すれば心強い。

特に中国ビジネスにおいては。

 

みなさんも是非台湾を訪問しよう。

その時には是非、この本を小脇に抱えて!

 

それだけで感謝の気持ちを表わせる便利な雑誌なのである。

 

あ、そうそう、阜杭豆漿には是非行きましょう。

朝ごはんで有名なお店です。

美味しいよ。

 

いい仕事をしてくれたFrauの編集スタッフに感謝。

このタイミングで、この特集紙面、タイムリーとはまさにこのこと。

今も残る"戦後"...戦勝国の既得権

戦後を語る時、何を思い浮かべるのでしょうか?

 

今であれば沖縄米軍基地がしばしば注目されますが、身近なところにもあるもので、例えば食糧も一例になるでしょう。

 

日本の小麦の輸入国を見ると、米国、カナダ、オーストラリアの三国から殆どを調達し、その全ては実は戦勝国ばかり。小麦を使った食品を挙げればたくさんありますね。パン、うどん、ラーメン、スパゲティ、マカロニ、餃子の皮、味噌、醤油、クッキー、ケーキ、ケーキ、天ぷら、揚げ物の衣、お好み焼きもそうですね。

 

色々あるけれど、需要規模でいえば、パンはやはり大きい。

元々パン食の習慣が無かった日本人にパン食を普及させたきっかけは、学校給食におけるパン食。そして、その背後には当時のアメリカの政策が影響した。ビジネスとすれば"マーケティング"に該当するのでしょう。

 

日本国内での小麦需要を拡大させるには味覚の洗脳が手っ取り早いとして、子供に食べさせることから始めたという深謀遠慮。人間は20歳になるまでに経験していない味覚に対しては、どうしても臆病になるもので、中には食わず嫌いにもなる。そういうこともあって、若年層から"市場開拓"に取り組んだと言われています。

 

そうして需要が増えた現在、どうなっているかといえば、SBS制度が導入されたとはいえ、今なお殆ど三つの国から調達しています。それが米国、カナダ、オーストラリア。いうなれば戦勝国の"ご褒美"のようなものでしょう。

 

ところで、いま、国内需要の90%程度を三国から調達しているけれど、本当に大丈夫?

これまでの経緯はどうであれ、これだけ小麦を食べる食文化が定着した現在、三国で凶作になればに本の食卓への影響は計り知れない。以前と変わらず、日本に輸出してくれる保障はどこにもない。自由貿易主義の論者はカネを積めば買えるとでもいうのだろうけど、穀物は単純な資本主義で語れない。

世界三大穀物は、小麦、大豆、とうもろこし。生産国各国の穀物に関する貿易政策は、国内需要を満たし、必要備蓄量を満たした上で余剰があれば輸出する、というもの。昨年はロシアが禁輸したことで、世界中の小麦相場が上昇しただけでなく、小麦需要の穴埋めでとうもろこしまで価格が高騰しましたね。

 

今までは何とか調達できたけれど、生産国でも足りない状況となれば輸出などする理由はない。その時、日本は?そして、日本の食文化はどうなる?

こういった、緊急事態や食糧安全保障を検討しながら、農業政策を進めるべきなんだけど、今の議論は「どうしたらアメリカに輸出機会を提供出来るか?」に腐心しているようす。TPPでは全農を抵抗勢力にした論陣を張るといった程度だし、非常に心もとない。

 

いつになれば「戦後」が終わるのだろう。

民間企業で出来るレベルに限界はあるけれど、経済活動レベル(国力)を落とさぬことで政治力や発言力を高める努力はしっかり果たしている。政治もしっかりして欲しい。

★★★★☆ 100年予測

著者:ジョージ・フリードマン 
発行:早川書房

価格:1,890円

出版:2009年10月

 

100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図 正直胡散臭いサブタイトルが嫌気だったけど、取引先の社長と会食の際、この話をしようとなったのでイヤイヤながら読み進めたのがきっかけ。「最強のインテリジェンス」とか「影のCIA」とかアメリカ的価値観ではブランドの力がすごいのだろうけど、日本のインテリジェンスの方がすごいぞ!とか思っていたので黙殺していたほど。

 

で、読み進めると...。

意外に普通の視点であることに驚きながら読めました。基本的に地政学的な要衝の拠点を占領、制圧することがアメリカ的価値観の要諦にあることは想像していたので、現実的な要素の強い本として読めました。

 

全ては地政学的、Geographicalな視点で語られるので、この本を読んだ後は歴史の本を読むと楽しく読めると思います。歴史の本といっても中国の歴史ではなく、ローマの歴史がオススメ。中国の歴史は易性革命の繰り返しなので、継続性が少なく、実は物足りない。その点、ローマの歴史はイベリア半島統一だけで建国以来500年を要しているので、時間軸的スパンが長大。ローマは一日にしてならず、とは文字通り。

 

ただ、気になるのは、原書との相違の有無。無いかもしれないけど、意外にも違いがあることが多い。しかも、こういった国際政治的な書籍の場合、敢えて掲載を省略することもある。ということで、今、ペーパーバックを物色中。更に言えば、塩野七生さんのローマの本は第一巻から読み始め。

 

知的好奇心がこの本だけで終わらず、他の本にも飛び火。想像以上の面白さに敬服。

キャッチコピーは突然にやってくる...

過去十年間、日本経済でどんなことが注目されたのか、或は注目されようとして時の政権が提唱してきたかをザックリとまとめてみた。

すると、こういったキャッチコピーは、アメリカからの年次改革要望書に準じた規制排除政策を推進するためのスケープゴートである可能性が極めて高いようです。

例えば...

- 1997年は「大競争時代」「メガコンペティション」。

- 2003年は「構造改革」「小さな政府」

- 2010年は「平成の開国」とか「第三の開国」。

といったコピー。

「大競争時代」の頃、国会討議では野党や反対論者が「慎重な検討が必要だ」として反論すると「今はスピードの時代だ」として詳細の検討をスキップされることもありました。

 

今に思えば、金融事業の規制緩和、持ち株会社制度の解禁等は日本の産業の歴史から見れば必然であった制度を廃止することだったけど、耳に心地よいコピーや危機感を煽られた演説を聞いてしまうと、目が霞むんでしまうもの。

 

具体的に見ましょう。

1997年は「金融ビッグバン」とか「円の国際化」といったサブコピーまで出てきて、バブル崩壊以降の景気低迷感を打破するには公共投資ではなく規制排除が必須とさえ言われたものでした。逆に規制排除さえすれば景気は良くなるし、多少の痛みはあるものの大きく飛躍するには必要だといった論調もメディアに多数露出。

また、金融産業についてはグローバル競争に遅れることのないよう、むしろ打って出るには金融ビッグバンしかない!といったギャンブルとも受け取れる発言もメディアでは多かった。肝心のメディアは規制改革されてないから対岸の火事、要は地上波の特権は今も続いている。

時は移り、2004年は「構造改革」。

小泉政権が「民に出来ることは民に」とのサブコピーを印籠のように翳しつつ、当時の不景気の要因は既存の規制にあるとして解散選挙まで実行。要は景気が悪い原因は規制にあり、規制の代表格として郵政を採り上げ、国民の是非を問うとして郵政解散まで行ったもの。

党内では法案に抵抗するグループを「抵抗勢力」として排除、旧来の自由民主党の票田であった農業票や郵政票を放棄してまで推進することで「本気の規制緩和」を演出。この「劇的」な演出が大衆には効くもので、郵政民営化を争点とした解散総選挙では自由民主党が大勝、小泉政権はこれ以上無い支持を得て政権を進めていた。

郵政改革によって景気が浮揚することはないことは分かっていたし、実際そうであったけれど、規制改革が景気を良くするのではないかと期待を持った人が多かったのでしょう。だからこそ総選挙では圧勝したのでしょう。

因に小泉以降は不発、というなかれ。後輩の首相達が小泉時代の政策のツケを払わされてきたようなものだ。

 

そして現在。2010年は「平成の開国」「第三の開国」。

日本は開かれた国ではないとして更なる関税撤廃を進めることで景気浮揚を図るとした菅政権。貿易立国である日本は自由貿易を主導する立場にあり、更なる開国を進めることが必要だというもの。開国をすることが目的に聞こえるが、アメリカにすり寄るふりした深謀遠慮にも見えず残念。

アメリカのターゲットはご存知の通りTPP。またの名を日米FTA。輸出倍増による雇用回復を狙うアメリカにとって悲願のFTAなのです。他の小国相手の貿易では雇用倍増は果たせないので対日輸出を物販、サービスの双方で展開するはず。

アメリカが得るものは想像がつく。農業、金融、物流、知的財産権、医療分野でしょう。日米経済調和対話を読めばすぐに分かるはず。アメリカ基準を日本も導入せよ!という趣旨なんだけど、本当に導入されたらアどうなることか分からん。

 

1994年以来、時の米国通商代表部(USTR)が来日しては同じ言葉をステートメントに残してきた。自由、規制緩和、市場開放ばかり。逆にアメリカは乳製品と砂糖は自由貿易を頑に拒んでいる。日米貿易では斯様な商品が無いから報道されていないのだろう。でも、アメリカだって自由貿易を否定している分野を持っていることをしっかりと日本国民に伝えないといけないと思う。

 

アメリカの要望、それをそのまま国民に伝えず、耳に心地よいキャッチコピーとともに演出してきた政府の努力は認めるが、その結果が現在。何とも頼りない。

 

次の転機でもキャッチコピーが出てくるはずですが、踊らされないよう、しっかりと本質を見るようにしましょう。

 

(参考)資料;年次改革要望書

アメリカも農業ではTPPを看過出来ない

こういう情報は報道されない。でもネットの時代だからこそ分かる情報を!

 

実はアメリカの畜産団体の大手たる牛乳生産者の協会だってTPPには反対している。具体的には価格競争力を持つニュージーランド産の乳製品に限定してTPPの関税撤廃対象から除外するよう求め、陳情書を昨年2010年にUSTR(米国通商代表部)へ提出している。

 

日米間の乳製品では価格競争力に自信があるようだけど、相手がニュージーランドになると自信が無いようで。理由も明確ですが...。

 

これを見た方は「そんな馬鹿な?...」と思う人もいると思いますが、これが現実。実際にTPPの交渉現場では、アメリカの関税撤廃からニュージーランド産乳製品は除外しつつ、他のアメリカ製品に対する関税は撤廃してもらうという都合の良い、良いとこ取りを突きつけているはずです。

これぞ国際協議。最初はお互いに何を大切にしているか突きつけ合うのです。

 

折角ですから意訳した日本語も付して以下にサマリーを。

◆Quote

 NMPF Insists on Total Exclusion of U.S.-New Zealand Dairy Trade in TPP: January 25, 2010

NMPF(全米牛乳生産者連合)は、TPPにおけるアメリカとニュージーランドの貿易から乳製品を除外するよう主張

 

In a letter to the Office of the United States Trade Representative (USTR), NMPF again pressed for full exclusion of New Zealand’s dairy products in the Trans-Pacific Partnership (TPP) trade agreement.

USTRに出した書簡のなかで、NMPFはニュージーランド産の乳製品はTPPの対象外とするよう再び主張した。

 

Although NMPF believed in the importance of balanced trade and in the potential for well-negotiated trade agreements to benefit the U.S. dairy industry as a whole, each agreement must be judged on its own merits.



NMPFは、アメリカ乳製品産業全体としては、調和のとれた貿易が大切なこと、また、しっかりと交渉された貿易協定によるメリットを信じているが、個々の協定はそのメリットを個別に判断されるべきと考えている。

 

A U.S.-New Zealand TPP would negatively impact the U.S. dairy industry.

アメリカとニュージーランド間のTPPは、アメリカ乳製品産業にマイナスの影響を与えるはず。

 

NMPF estimated that milk prices received by producers would drastically drop and gross revenues received by U.S. dairy farmers would plunge by a cumulative $20 billion over the first 10 years of the FTA if U.S. dairy restrictions on exports from New Zealand were fully phased out in the TPP FTA.

NMPFの予測では、もし、TPPによりアメリカとニュージーランド間で乳製品に関する関税が完全撤廃されると、アメリカの牛乳生産者が受け取る際の乳価は大きく下落、アメリカ乳製品農家の受け取り収入はFTA導入後最初の10年間で累積200億US$は減少する。

 



The letter is available here. Members of the Congressional Dairy Farmer Caucus alsosent a letter to USTR Ambassador Ron Kirk expressing their support for exclusion of U.S.-New Zealand dairy trade under the TPP.

その書簡はこのリンクで読めます。また、連邦議会乳製品幹部会のメンバーは米国通商代表部のRon Kirkにニュージーランド産乳製品の対象除外に向けた支持を表明する書簡を送った。

◆Unquote

 

こういうふうに利害が真っ正面からぶつかる時は、新たな利害関係を作ることで仲間とすると良い。そうすれば、目前の利害を相対的に小さなものとなることが多い。具体的には、両国共通の仮想敵国とか利害対象を作り、徒党を組むと良い。歴史に学べばそうなる。

 

アメリカとニュージーランドの対立は、どういう流れで消えるのだろう?まさか対日貿易で徒党を組むとか?ちなみに、ニュージーランドではTPP反対運動が起こっている。理由は単純。「アメリカは乳製品市場を開放しないだろうから、ニュージーランドの誇る世界最大の乳製品輸出企業のFonterraでさえ得るものが無い。だから加盟する理由が無い。」というもの。

 

とはいえ、アメリカが考える対日圧力はあの手この手でやってくる。

だから余計に心配になる。

 

経産省、産業構造ビジョンを公表‎! はTPP検討用資料、故に内容充実!

一年前とはなるけれど、「経産省、産業構造ビジョンを公表‎!」 といったタイトルで2010年6月6日の日経朝刊に掲載されてました。一年経った今だから分かるけど、これはどう見ても明らかに TPP政策立案に必要な基礎資料。

 

だからこそなのか、資料としての完成度も秀逸!この資料構成でよく見てほしいのは、グラフ。資料は意図を絞って作るべきことを改めて気づかせてくれる、そんな資料の典型例。まぁ、典型例だからこそ、説明もし易いのだけれど。

 

例えば、他国と比較する際、ある時期を100として指数化しているのか、それとも実数で比較しているのかは、そのページで伝えたい趣旨によって変えられている。ある資料では増減率に注目して比較するけれど、絶対額には触れないようにする工夫が随所にある。そういう意味で無知な大衆を目論み通りに導くための資料。読み進めれば分かるけど、行間ににじむのはTPP、FTA、EPAといった自由貿易協定の促進です。一番の読者は国民にあらず、たぶん農林水産省かも知れないけど...。


このビジョンを検討するにあたって作られた、経済産業省による日本の産業を巡る現状と課題には多くのデータが引用されている。この資料は、統計を上手に纏め、一定の見解を主張する優良資料の典型例とも言えるので、これからプレゼン資料等を作る人にとって大変良い教材とも言える。見栄えはいまひとつだけどストーリーや資料の見せ方は秀逸なのですよ。しかしながら、結論部分がいただけない。リンクで見ればわかるけれど、P.41以降とそれまでのストーリーは飛躍しすぎなのです。

この資料では、政策としてのターゲティングポリシー、続いて、日本の産業競争力として事業コスト(法人税)が採り上げられています。諸外国と比べて高いので日本減税を求める世論を受けてページを割いたのだと思う。

 

けれど、日本という地域を減税(安売り)する必然性はない。例えば、欧州は域内経済圏だから単純に比較する対象ではない。また、途上国は外資招致の観点から減税に踏み切った背景もあり、これも比較対象外。中国にいたっては重税の国だから比較対象にならないだけでなく、国民の人口規模の違いの点でも比較しても意味がない、とも言いたくなる資料が多い。

 

更に補足すると、中国の経済成長に注目することは良いことだけど、実態は脆弱な産業基盤であることを理解している人がどれだけいるのだろうか?同国の外貨獲得の2/3はいわゆる外資との合弁企業が稼いでいるもので、中国経済固有の競争力なのかといえば実は疑問符がつく。実力ではなく、先進国の投資によるジョイントベンチャーの成長に関する持ち分を得ていると理解すれば良い。


ともあれ、この資料は秀逸。

でも、当時公表された産業ビジョンを真に受けるのではなく、一連のデータによって、こういう仮説を持った経産省を活用するにはどうしたらよいかを考える程度で良いのではないかと思う。経済の前線を担う企業に対する営業支援を期待するのが一番。もちろん、主従でいえばあなたが主、経産省は従です。この程度での期待なら、結果がうまくゆけば経産省側も「省の功績」として主張できるし、関係者一同ハッピー。

 

この資料は当時は経済産業省独自の資料調査であるかのように理解されたけど、今となって漸く真意に気づかされる。要はTPP用の資料。けれど、資料としての充実度が群を抜いているので、マクロ観が欲しいときには是非一度見てほしい資料のひとつ。今でも時々探しては見返す資料のひとつ。

 

良い資料は、内容を更新さえすれば、物語としての秀逸さは今も健在。この資料も同様だと思う。

 

とはいえ、一番気になるのは日米経済協調対話における使われ方。これは名前こそ「年次改革要望書」や「日米構造改革協議」から変わっているけど、中身は同じ。アメリカ国益に沿うよう、日本国内を改革するよう日本に突きつける内容。日本も同様の改善要望を出しているけれど、日本の要望は一度是非確認いただきたい。愕然とする。日米双方の要求を相対的に比較すれば天地の差。誰だ?こんな仕組みを考えたのは?

 

ここまで来たら見てもらいましょう!アメリカ大使館に掲載されている日米経済協調対話の訳文とやらを

 

うーむ、如何なものかと思う。やっぱり加盟には大反対。

年次改革要望書に注目しよう

主権国家として恥ずかしいことですが、アメリカによる日本の改造が進んでいる。
日本の規制緩和や政策は日米間の年次改革要望書を見れば分かる、とも言われるほど。

今は「日米経済調和対話」と改名され、別名「新 年次改革要望書」とも。

を米大使館が堂々公表


直近では最大のトピックであった「郵政法案」はもともと、一人の政治家が始めたのではなく、1989年7月14日の日米首脳会談の際、ジョージ・ブッシュ大統領が宇野総理に提案、実現した「日米構造協議」がはじまり。その後、宮沢総理の時、具体的には1994年からはじまる、現在の「年次改革要望書」へと変わったものが始まり。この一連の関係者を称して、書籍では売国奴と称する向きもある。つまり、小泉総理が勝手に言い出したものではない。

さて、
「日米構造協議」における米国の主要な項目をあげると、
 1.公共投資の拡大 (実行。GNPの10%/10年間で総額430兆円、後に630兆円へ積み増し)
 2.土地税制の見直し(拒否。農地の保有税の上昇、)
 3.大店法の規制緩和(実行。大規模小売店鋪法として出店ラッシュ、地方にシャッター街の弊害)

年次改革要望書」における米国からの要望が、日本の施策として実現した例は、
 1.建築基準法の改正
 2.法科大学院の設置の実現、
 3.独占禁止法の強化と運用の厳密化、
 4.労働者派遣法改正
 5.郵政民営化

日本の国家としての資金力は実は郵政にある。米国の主張では、この資金が国債買い上げに使われているからこそ、外資系金融機関の日本市場への参入障壁が高い、というけれど、現実には日本の、郵政が持つ巨大な預金を市場運用資金として使いたいこと、郵便局による銀行運営に株主として関与したい、日本に進出した米国金融機関の活動を支援すること、以上三点が目的。

年次改革要望書という個別名称は、国会でも口にされない。なぜなら議事録に掲載されるから。

1990年代後半から進んだ労働者の低賃金化の背景は、労働者派遣法であるとする向きもあるし、現在の民主党はそれを修正しようとしている。やり方が下手なのが困るし、見ていてハラハラする。典型的なことは沖縄基地への対応で、立法当事者である国会が定めたこを執行する行政当事者である政治家と官僚の動きがチグハグで、案件として前進どころか後退している感じ。

今起きている数々の不都合なこと、不景気や低賃金化、GDPの停滞は、10年あるいは20年前におこったことが原因。企業だって数年前の判断が今に栄光していたりするので、政治においても同じことが言える。例えば、いま日本の発行する国債残高はGDPの二倍、約1,000兆円に上るけれど、上述した「1.公共投資の拡大 (実行。GNPの10%/10年間で総額430兆円、後に630兆円へ積み増し)」が無ければ370兆円程度であった可能性もある。こういう風に、現状を過去の政策や意思決定から紐解くと実は整合性ある物語になるものです。

こういった仕組みは当事者しか知らないのかと言えば、それはNO。

いまや情報公開が進んでいる。でも、一連のストーリーとはなっていないから意味が分からないのだと思う。

 

でも...不条理を感じたら考えてみよう、調べてみよう。

これがネット時代の有権者の責任。
wikipediaは意外なほどリベラル。全てが真実とは限らないけれど、このページで載せた程度なら、直ぐにでもここまで調べることができる。しかも裏付けと成る資料もリンクで揃っているし、ホント便利。

もっとネットを活用して、知る努力をしてはどうだろう。
本であれば下のような珍しいものもある。

国民として、当事者として、重要なことはもっと理解しようではありませんか!

 

拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる (文春新書)

旧大国と少数民族の対立

 今回のロシア・チェチェンの件は、ここだけではなく世界中に沢山ある。ロシアの件がたくさんあるのではなく、このように考えるとたくさんある。「大国対少数民族国家」、こう捉えると実に多い。

 

 この視点は今後も必要とされるし、必要とする場面が増えるはずです。旧来のように情報格差を利用した統治は、インターネットだけでなく、人の出入りの自由化が進みつつある現在、無力化しつつある。従来の不条理が白日のもとにさらされ、第二第三の事件が起こる。 人を幸せにするべきシステムが、時代の変わり目においては必ずしも幸せにするとは限らないの。ITも使い方次第で、社会の変化を促す結果として、人に不幸な運命を作り出す。